偉大なる 名匠BEST8 の攻略ガイド
ヨーロッパ映画監督の中から、名匠最高峰8人( 名匠BEST8 )をピックアップ。
ヨーロッパ映画監督・偉大なるBEST(ベスト)8
[最終更新日]2016/08/19
ヨーロッパ映画監督の中から、名匠最高峰8人( 名匠BEST8 )をピックアップ。
[最終更新日]2016/08/19
Ingmar Bergman [1918-2007]
天才。スウェーデンが生んだ世界的名匠。
牧師の息子として生まれながら、作品で「神の不在」を問い続けた親不孝者。
神学者の道から逸脱した彼の苦悩は、小品「夜の儀式」から読み取れる。作品中、猥褻罪で劇団員を糾弾する判事は、ベルイマン自身の投影にほかならない。厳格な法曹家系を継ぐ判事が、自由奔放、マスターベーション的に芝居を演じる劇団員とのあまりのギャップにショックを受け、心臓発作で死ぬ。偽善的日常に疑問を抱き、教会を飛び出して映画作家になったベルイマンの人生を象徴した作品である。
彼が絶対に父親に観せられない作品は、「神の不在3部作」と呼ばれる作品群「鏡の中にある如く」「冬の光」「沈黙」の中の特に第2作「冬の光」だ。親に言われるまま牧師を継いだ主人公は愛人を持ち、妻に先立たれて投げ遣りである。やがて、救いを求めた信者に自殺されるなどして神の無力に絶望し、教会の使丁から「人生最大の危機を迎えた時に弟子たちに裏切られ磔にされたイエスこそ、神に見放された象徴ではないのか」と問い糺されて答えに窮する。十字架の下、礼拝者に向かって「神は地に堕ちた!」と叫ぶラストは鮮烈であり、まさに豪速球だ。ベルイマン本人にすれば、痛快であろう。この映画が、「もし自分が神職を継いでいたら・・・」という仮定のもとに創作されたのは明らかで、ベルイマンの境遇と作風を知る者だけが喝采を贈れる傑作であり、逆に言えば、予備知識なしに観たら、とんでもない映画だということになる。
ベルイマンは「神」という概念を認めているだけで、神が人を救うなどとは思っていない。現に彼は、善人の苦境に沈黙する神をも、「叫びとささやき」や「処女の泉」で描いてみせる。つまり全ての作品で、善人も悪人も、神は見放すのだ。評論家によっては、「どうしようもない愚かな人間こそ、神が救う対象であることを訴える」という解釈もあるが、それでは他の様々な作品との辻褄が合わなくなる。ベルイマン映画はもっと辛辣である。冒頭で彼を「天才」と評したが、「悪魔」と言い換えてもいいだろう。
全ての作品に人間の業が厳しく描かれ、観る者の心にズシンと響く。単純な作品は1本もなく、考えさせられたり謎解きを迫られる映画ばかりで、特に中期の作品は凄まじい。主人公が死神とチェスをする「第七の封印」は、彼が教会の壁画から連想したもの。失語症患者と看護師の葛藤を描く「仮面 ペルソナ」 は、病院で2人の女性患者が掌の大きさを比べ合う様子を見て思いついた。主人公の病気に失語症を選んだのは、心裡と言語表現の溝を訴えたものであろう。発想の天才であり、ベルイマンは私の先生である。
天才映画作家ウディ・アレンはベルイマンの強烈な信奉者であり、多くの作品でその技法を模倣している。名作「アニー・ホール」や「重罪と軽罪」などで、回想に現在の人物を混在させるシーンは、「野いちご」の模倣であることは明らか。事実、「夫たち、妻たち」の中で、アレンが妻ミア・ファロー(日常生活でも同棲中だった)に「昔、『野いちご』を二人で観て楽しんだね」と言うセリフが出てくる。(但し、「野いちご」の技法自体も、ベルイマンがスウェーデン映画の先輩アルフ・シェーベルイの「令嬢ジュリー」から頂いたと推測できる)。 また、「アニー・ホール」の翌年に撮った家族の愛憎劇「インテリア」は何もかもベルイマンの真似である。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
46 危機 | ★★★★★★★★★★ |
46 われらの恋に雨が降る | ★★★★★★★★★★ |
47 インド行きの船 | ★★★★★★★★★★ |
48 愛欲の港 | ★★★★★★★★★★ |
48 闇の中の音楽 | ★★★★★★★★★★ |
49 渇望 | ★★★★★★★★★★ |
49 牢獄 | ★★★★★★★★★★ |
50 歓喜に向かって | ★★★★★★★★★★ |
51 夏の遊び | ★★★★★★★★★★ |
53 不良少女モニカ | ★★★★★★★★★★ |
54 愛のレッスン | ★★★★★★★★★★ |
55 夏の夜は三たび微笑む | ★★★★★★★★★★ |
57 第七の封印 | ★★★★★★★★★★ |
57 野いちご | ★★★★★★★★★★ |
58 魔術師 | ★★★★★★★★★★ |
58 女はそれを待っている | ★★★★★★★★★★ |
60 処女の泉 | ★★★★★★★★★★ |
60 悪魔の眼 | ★★★★★★★★★★ |
61 鏡の中にある如く | ★★★★★★★★★★ |
62 冬の光 | ★★★★★★★★★★ |
63 沈黙 | ★★★★★★★★★★ |
64 この女たちのすべてを語らないために | ★★★★★★★★★★ |
66 仮面ペルソナ | ★★★★★★★★★★ |
68 恥 | ★★★★★★★★★★ |
68 狼の時刻 | ★★★★★★★★★★ |
69 夜の儀式 | ★★★★★★★★★★ |
69 沈黙の島 | ★★★★★★★★★★ |
73 叫びとささやき | ★★★★★★★★★★ |
74 ある結婚の風景 | ★★★★★★★★★★ |
74 魔笛 | ★★★★★★★★★★ |
76 鏡の中の女 | ★★★★★★★★★★ |
77 蛇の卵 | ★★★★★★★★★★ |
78 秋のソナタ | ★★★★★★★★★★ |
81 夢の中の人生 | ★★★★★★★★★★ |
82 ファニーとアレクサンデル | ★★★★★★★★★★ |
84 リハーサルの後で | ★★★★★★★★★★ |
03 サラバンド | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2016/08/19
Federico Fellini [1920-1993]
オチャメな天才。イタリア映画界最高峰にして、世界屈指の映画作家。
目線は常に庶民にあり、階級社会や権力に鋭く斬り込む作風は絶賛に値する。風刺対象の多くにメタファを用いており、常に、これは何の象徴なのかと考えながら鑑賞することが格別の楽しみである。
例えば「オーケストラ・リハーサル 」では、指揮者を国家権力、演奏者を庶民と見なせば面白さ倍増。最後まで建物から一歩も出ない力メラは、苦悩からの安易な逃避を頑なに拒絶しているようにみえる。
「8 1/2 」の主人公はフェリーニ自身の投影であり、監督の苦悩や映画の舞台裏、自身が選んだ人生に対する誇りと悔悟が、夢と幻想を織り成しつつ、えぐるように綴られる。少年が笛を吹くラスト・シーンが示唆するものは?世界一の名作である。
鮮やかな原色、アピールとなる大仕掛け、声張り上げる役者の演技など一貫した映画作りを続け、殆どの作品で、10 分も観ればこれはフェリーニの映像だと気づく。幼い頃からサー力ス好きで、これをモチーフにした作品や演出も多い。
奥方のジュリエッ夕・マシーナをこよなく愛し、彼女をヒロインにした作品を撮りまくり、世界的女優に仕立て上げた。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
51 白い酋長 | ★★★★★★★★★★ |
51 寄席の脚光(共作) | ★★★★★★★★★★ |
51 街の恋/第4話 | ★★★★★★★★★★ |
53 青春群像 | ★★★★★★★★★★ |
54 道 | ★★★★★★★★★★ |
55 崖 | ★★★★★★★★★★ |
57 カビリアの夜 | ★★★★★★★★★★ |
60 甘い生活 | ★★★★★★★★★★ |
62 ボッカチオ’70 (第2話) | ★★★★★★★★★★ |
63 8 1/2 | ★★★★★★★★★★ |
65 魂のジュリエッタ | ★★★★★★★★★★ |
68 フェリーニの監督ノート | ★★★★★★★★★★ |
68 世にも怪奇な物語(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
70 サテリコン | ★★★★★★★★★★ |
70 道化師 | ★★★★★★★★★★ |
71 ローマ | ★★★★★★★★★★ |
74 アマルコルド | ★★★★★★★★★★ |
76 力サノバ
|
★★★★★★★★★★ |
78 オーケストラ・リハーサル
|
★★★★★★★★★★ |
80 女の都 | ★★★★★★★★★★ |
83 そして船は行く | ★★★★★★★★★★ |
86 ジンジャーとフレッド | ★★★★★★★★★★ |
87 インテルビスタ | ★★★★★★★★★★ |
90 ボイス・オブ・ムーン | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2016/09/16
Michelangelo Antonioni (ミケランジェロ・アントニオーニ) [1912-2007]
一貫して「愛の不毛」と「人間の空虚さ」を追求し続けたイ夕リアの巨匠。
テーマに「愛の不毛」を選んだのは、自身の最初の妻だったレティツィア・バルボンに、いきなり何のきっかけもなく「私、もうあなたを愛していないの」と告げられたことがきっかけである。「ならば、どうすればいいのだ?」と、彼は自作で問い続けた。この言葉は余程のショックだったのだろう。彼の複数の作品に、このセリフが登場する。
彼を理解するにうってつけの作品は、「さすらい」。ここでさすらう主人公は、間違いなくアントニオーニ自身であり、一方的に別れを告げる女は先妻そのものである。先妻への憎悪をこれでもかと描いているが、要するに ミケランジェロ・アントニオーニ は、妻選びに失敗したわけだ。「愛は不毛」「人は孤独」という訴えは、彼の極めてプライベートな思い込みである。
後に彼は、「欲望」「ある女の存在証明」などで人間の空虚さ、世の中の空しさを問い始める。作品の出来映えは素晴らしいが、最後までネガティヴな映画作家であった。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
51 街の恋/第2話 | ★★★★★★★★★★ |
57 さすらい | ★★★★★★★★★★ |
55 女ともだち | ★★★★★★★★★★ |
61 夜 | ★★★★★★★★★★ |
62 太陽はひとりぼっち | ★★★★★★★★★★ |
64 赤い砂漠 | ★★★★★★★★★★ |
66 欲望 | ★★★★★★★★★★ |
70 情事 | ★★★★★★★★★★ |
70 砂丘 | ★★★★★★★★★★ |
75 さすらいの二人 | ★★★★★★★★★★ |
82 ある女の存在証明 | ★★★★★★★★★★ |
95 愛のめぐりあい(共作) | ★★★★★★★★★★ |
04 愛の神、エロス(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2017/11/01
Jean-Luc Godard [1930-]
狂人。超多作で、60年代だけでも27本撮った。
映画を愛しすぎるあまり「映画とは?」「映像とは?」を自問し続け、時に自身で消化しきれないまま放出するため、難解な作品が多い。出来映えには総じてムラがあり、苦痛を伴うものもある。しかし、観ずにはいられないのだ。
映像は多くが先鋭的かつ大胆だが、会話、独白、ナレーションと画面とは必ずしも一致しない。難しい理屈でもって解説する評論家もいるが、要は好き勝手に編集しているのだ。だからこちらも深く考えず、好き勝手に観ればそれでよい。
60年代より「政治的戦闘映画」と称する国政批判映画を撮り始めたが、アルジェリア占領を批判した「小さな兵隊」が光るぐらい。アイロニーやメタファの活用が意外に不器用で、直截的になりすぎ、「東風」ほか数多くの作品には面白味も何もなかった。
他の監督たちと競うことを好んだのか、オムニバス作品には殆ど参加して意欲を燃やし、ライバルたちに圧倒的な差をつけた。特に、未来の娼婦像を描いた「愛すべき女・女たち」の第6話は秀逸。
個人的には、「恋人のいる時間」での手と手だけが絡み合うベッドシーンがベスト1映像。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
54 コンクリート作戦 | ★★★★★★★★★★ |
55 男の子はみんなパトリックという名前である | ★★★★★★★★★★ |
58 シャルロットと彼女のジュール | ★★★★★★★★★★ |
58 水の話(共作) | ★★★★★★★★★★ |
59 勝手にしやがれ | ★★★★★★★★★★ |
59 JLG/自画像 | ★★★★★★★★★★ |
60 女は女である | ★★★★★★★★★★ |
60 小さな兵隊 | ★★★★★★★★★★ |
62 女と男のいる舗道 | ★★★★★★★★★★ |
62 新・七つの大罪(第5話) | ★★★★★★★★★★ |
63 軽蔑 | ★★★★★★★★★★ |
63 カラビニエ | ★★★★★★★★★★ |
63 ロゴパグ(第2話) | ★★★★★★★★★★ |
64 恋人のいる時間 | ★★★★★★★★★★ |
64 はなればなれに | ★★★★★★★★★★ |
65 アルファヴィル | ★★★★★★★★★★ |
65 気狂いピエロ | ★★★★★★★★★★ |
65 パリところどころ(第5話) | ★★★★★★★★★★ |
65 愛と怒り(第4話) | ★★★★★★★★★★ |
66 男性・女性 | ★★★★★★★★★★ |
66 彼女について私が知っている二、三の事柄 | ★★★★★★★★★★ |
66 愛すべき女・女たち(第6話) | ★★★★★★★★★★ |
66 メイド・イン・U.S.A. | ★★★★★★★★★★ |
67 中国女 | ★★★★★★★★★★ |
67 ウイークエンド | ★★★★★★★★★★ |
68 ベトナムから遠く離れて(1編) | ★★★★★★★★★★ |
68 ありきたりの映画 | ★★★★★★★★★★ |
69 東風 | ★★★★★★★★★★ |
69 たのしい知識 | ★★★★★★★★★★ |
69 プラウダ(真実)(共作) | ★★★★★★★★★★ |
69 ブリティッシュ・サウンズ(共作) | ★★★★★★★★★★ |
70 イタリアにおける闘争 | ★★★★★★★★★★ |
71 ウラジミールとローザ | ★★★★★★★★★★ |
72 万事快調 | ★★★★★★★★★★ |
72 ジェーンへの手紙(共作) | ★★★★★★★★★★ |
75 ヒア&ゼア/こことよそ | ★★★★★★★★★★ |
75 パート2 | ★★★★★★★★★★ |
76 うまくいってる?(共作) | ★★★★★★★★★★ |
79 勝手に逃げろ/人生 | ★★★★★★★★★★ |
81 フレディ・ビュアシュへの手紙 | ★★★★★★★★★★ |
82 パッション | ★★★★★★★★★★ |
82 力ルメンという名の女 | ★★★★★★★★★★ |
84 こんにちは、マリア | ★★★★★★★★★★ |
85 探偵 | ★★★★★★★★★★ |
87 右側に気をつけろ | ★★★★★★★★★★ |
87 アリア(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
88 パリ・ストーリー(第5話) | ★★★★★★★★★★ |
90 ヌーヴェルヴァーグ | ★★★★★★★★★★ |
91 新ドイツ零年 | ★★★★★★★★★★ |
93 決別 | ★★★★★★★★★★ |
96 フォーエヴァー・モーツァルト | ★★★★★★★★★★ |
98 映画史 | ★★★★★★★★★★ |
01 愛の世紀 | ★★★★★★★★★★ |
02 10ミニッツ・オールダー/イデアの森(第8話) | ★★★★★★★★★★ |
04 アワーミュージック | ★★★★★★★★★★ |
05 選ばれた時間 | ★★★★★★★★★★ |
14 さらば、愛の言葉よ | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2018/03/20
Claude Lelouch
ストーリーをモザイク化し、女性が小指で編み直すがごとく編集していくその手法は鮮やかである。例えるなら、バニラとチョコとストロベリー味のゴーフルを1 枚ずつ食べると、半分ぐらい進んだところで飽きが来る。しかし、これを3 枚重ねて一口サイズに切り分け、また繋ぎ直すとどうなるか?外見が同じで中身がバラバラ、食べる者は戸惑うが、逆に、次は何が出るか分からない驚きと楽しみを得るだろう。そして、こうして食べるほうが断然美味しいことに、食べ終える頃に誰もが気づくのだ。ルルーシュ作品は、そんな映画である。
「男と女」が代表作で、この夕イトルは、彼が追求する永遠のテーマそのものだ。しかし、恋愛のみを一途に描くフランソワ・トリュフォーと違い、彼の映画には、それぞれの時代を反映した強烈なイデオロギーが必ず内包されている。男と女の間に生ずる愛や憎悪といった感情のなかから、彼が示唆するものを嗅ぎ取る作業は実に楽しい。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
62 行きずりの二人 | ★★★★★★★★★★ |
66 男と女 | ★★★★★★★★★★ |
67 青い恋人たちのとき | ★★★★★★★★★★ |
68 男と女 2 | ★★★★★★★★★★ |
68 白い恋人たち | ★★★★★★★★★★ |
68 ベトナムから遠く離れて(1編) | ★★★★★★★★★★ |
69 愛と死と | ★★★★★★★★★★ |
70 流れ者 | ★★★★★★★★★★ |
70 あの愛をふたたび | ★★★★★★★★★★ |
71 恋人たちのメロディー | ★★★★★★★★★★ |
72 冒険また冒険 | ★★★★★★★★★★ |
73 男と女の詩 | ★★★★★★★★★★ |
73 時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日(一編) | ★★★★★★★★★★ |
74 マイ・ラブ | ★★★★★★★★★★ |
75 猫警部事件簿 | ★★★★★★★★★★ |
76 レジスタンス/反逆 | ★★★★★★★★★★ |
76 ランデヴー | ★★★★★★★★★★ |
77 続・男と女 | ★★★★★★★★★★ |
78 2人のロベール/花嫁募集中 | ★★★★★★★★★★ |
79 夢追い | ★★★★★★★★★★ |
81 愛と哀しみのボレロ | ★★★★★★★★★★ |
83 恋に生きた女ピアフ | ★★★★★★★★★★ |
84 ヴィヴァラヴィ | ★★★★★★★★★★ |
85 遠い日の家族 | ★★★★★★★★★★ |
88 ライオンと呼ばれた男 | ★★★★★★★★★★ |
95 レ・ミゼラブル | ★★★★★★★★★★ |
98 しあわせ | ★★★★★★★★★★ |
02 セプテンバー11(第2話) | ★★★★★★★★★★ |
02 男と女/アナザー・ストーリー | ★★★★★★★★★★ |
07 それぞれのシネマ(一編) | ★★★★★★★★★★ |
15 アンナとアントワーヌ/愛の前奏曲 | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2017/07/04
Andrzej Wajda [1926-]
軍人を父に持ち、10代で対ドイツ・レジスタンス運動に参加。自らの意思を映像化し、ナチ占領下のワルシャワを舞台にレジスタンス運動に命を捧げる若者を描いた「世代」を撮り、28歳の若さで監督デビューを果たす。2年後に「地下水道」、その2年後に「灰とダイヤモンド」と『抵抗3部作』を送り出し、世界にその名を轟かせたアンジェイ・ワイダ。
モノクロームに描き出される『抵抗』映像は非常なほどのドキュメント・タッチであり、そのリアリティに圧倒される。いずれも戦時下の青春群像劇としても一級品であり、「灰とダイヤモンド 」において主人公ズビグニェフ・チブルスキーが銃弾に倒れる姿は、他のどんな青春映画より格好よく、他のどんな戦争映画より残酷である。また、「世代」には、後に大監督となるロマン・ポランスキーがあどけないルックスで登場して楽しませる。
抵抗と映画の結晶はワイダの青春そのものであり、その後も、スターリン時代の暗部を描いた「大理石の男」などの大傑作を生み出していく。
ポーランドの連帯運動に参加したとして自国の映画界を追われた後も、フランスに渡り、名優ジェラール・ドバルデューを傭してフランス革命の志士「ダントン」を撮るなど血気盛ん。
07年、実に81歳の「若さ」で、自身の父親が虐殺された事件を題材にした「カティンの森」を撮っている。テーマ性と自身の年齢から、おそらくこれを遺作にする計画であろうが、最後まで頑として商業主義に走らない潔さは、その作風とともに格好よすぎる。
抵抗に始まり、抵抗に終わるワイダのレジスタンス人生に映像でつき合うことは、決して時間の無駄ではない。
【制作年と作品名】 | 【北野採点】 |
---|---|
54 世代 | ★★★★★★★★★★ |
56 地下水道 | ★★★★★★★★★★ |
57 灰とダイヤモンド | ★★★★★★★★★★ |
61 夜の終わりに | ★★★★★★★★★★ |
62 二十歳の恋(第5話) | ★★★★★★★★★★ |
65 灰 | ★★★★★★★★★★ |
68 すべて売り物 | ★★★★★★★★★★ |
69 蝿取り紙 | ★★★★★★★★★★ |
70 戦いのあとの風景 | ★★★★★★★★★★ |
70 白樺の林 | ★★★★★★★★★★ |
74 約束の土地 | ★★★★★★★★★★ |
76 死の教室 | ★★★★★★★★★★ |
77 大理石の男 | ★★★★★★★★★★ |
78 麻酔なし | ★★★★★★★★★★ |
80 ザ・コンダクター | ★★★★★★★★★★ |
80 鉄の男 | ★★★★★★★★★★ |
82 ダントン | ★★★★★★★★★★ |
83 ドイツの恋 | ★★★★★★★★★★ |
86 愛の記録 | ★★★★★★★★★★ |
88 パリ・ストーリー(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
88 悪霊 | ★★★★★★★★★★ |
90 コルチャック先生 | ★★★★★★★★★★ |
92 鷲の指輪 | ★★★★★★★★★★ |
94 ナスターシャ | ★★★★★★★★★★ |
95 聖週間 | ★★★★★★★★★★ |
99 パン・タデウシュ物語 | ★★★★★★★★★★ |
07 カティンの森 | ★★★★★★★★★★ |
12 菖蒲 | ★★★★★★★★★★ |
13 ワレサ/連帯の男 | ★★★★★★★★★★ |
16 残像 | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2016/08/19
Pier Paolo Pasolini [1922-1975]
父はムッソリーニの命を救ったファシストで、弟を反ドイツ・パルチサンの内部抗争で失うなど、彼の反骨精神を育む環境は整いすぎていた。戦後、職を奪われローマの貧民街で窮乏生活。その時したためた脚本の1つが、フェリーニによって映画化される名作「カビリアの夜」である。
脚本を認められて映画作家の仲間入りを果たし、極貧環境にさまよい狂う男を通してその悲惨さを訴えた「アッカトーネ」(日本公開時の邦題「乞食」)で監督デビュー。その後、世界中を旅した影響で、とてつもない僻陬を好んでロケを敢行し、特異な映像世界を生み出した。
「奇跡の丘」「王女メディア」「デカメロン」「アラビアン・ナイト」など、古典文学を独自の解釈で次々と映像化し、既成の権威に敢然と立ち向かう作風は見事。他にも、資産家の内部崩壊を得意の隠喩で描いた「テオレマ」、文明とブルジョワを痛烈に批判する「豚小屋」など、パゾリーニ・ワールドに嵌まると、もう抜け出せない。
1975年、「ソドムの市」を撮り終えた直後、ローマ近郊の海岸にて轢死体で発見される。その真相は不明で、パゾリーニ自身が演出したかのような謎めく死にざまである。その「ソドムの市」は好みの「男」を全裸にしていただぶるという公私混同の最低作。高得点を与えた日本の批評家が多かったが、アウレリオ・グリマルディ監督「パゾリーニ・スキャンダル」では、パゾリーニ役の役者が最低の映画だと自分で認めるシーンが登場する。
【制作年と作品名】 |
【北野採点】 |
---|---|
61 アッカトーネ | ★★★★★★★★★★ |
62 マンマ・ローマ | ★★★★★★★★★★ |
63 ロゴパグ(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
64 奇跡の丘 | ★★★★★★★★★★ |
64 愛の集会 | ★★★★★★★★★★ |
65 愛と怒り(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
66 大きな鳥と小さな鳥 | ★★★★★★★★★★ |
67 華やかな魔女たち(第3話) | ★★★★★★★★★★ |
67 アポロンの地獄 | ★★★★★★★★★★ |
68 テオレマ | ★★★★★★★★★★ |
69 王女メディア | ★★★★★★★★★★ |
69 豚小屋 | ★★★★★★★★★★ |
71 デカメロン | ★★★★★★★★★★ |
72 カンタベリー物語 | ★★★★★★★★★★ |
74 アラビアンナイト | ★★★★★★★★★★ |
75 ソドムの市 | ★★★★★★★★★★ |
[最終更新日]2016/10/31
Bernardo Bertolucci [1941- ]
イタリア近代映画史にその名を轟かす名匠。
大学中退後、パゾリーニの助監督を務め、師をイタリア最高峰の監督と広言してはばからない。
作風は華麗で官能的、耽美で絢爛、重厚で緻密。カットから編集まで凝りに凝り、特に編集には絶対に妥協しない。そのため長尺ものが多いが、大作と呼ばれる長尺ものが実は演出家自身が自己の映像を可愛がりすぎた所産である場合が大半であるなか、彼の作品からそんな印象を受けることは一切ない。特に316分の超大作「1900年」は圧巻で、2人の主人公が歴史の激流に呑まれていくさまを描きながら、左翼とファシズムの抗争、農民と地主の階級闘争に明け暮れたイタリア現代史を痛烈に批判して感動歴史絵巻に仕上げた。後に発表した163分の大作「ラストエンペラー」とともに、時代の変転を壮大な壁画のごとく鮮やかに塗り彩る手法は、憎いほどに無駄がない。
「ラストタンゴ・イン・パリ」をはじめ、極限のエロスを描写させてもその官能美は世界屈指。「暗殺の森」における雪に覆われた森での暗殺シーン、「シェルタリング・スカイ」での砂漠を行く駱駝の流浪シーンなど、その映像美は他の誰のものでもなく、まさしくベルトルッチの作品に間違いない。
【制作年と作品名】 |
【北野採点】 |
---|---|
62 殺し | ★★★★★★★★★★ |
64 革命前夜 | ★★★★★★★★★★ |
69 愛と怒り(第2話) | ★★★★★★★★★★ |
70 暗殺の森 | ★★★★★★★★★★ |
70 暗殺のオペラ | ★★★★★★★★★★ |
72 ラストタンゴ・イン・パリ | ★★★★★★★★★★ |
76 1900年 | ★★★★★★★★★★ |
79 ルナ | ★★★★★★★★★★ |
81 ある愚か者の悲劇 | ★★★★★★★★★★ |
87 ラストエンペラー | ★★★★★★★★★★ |
90 シェルタリング・スカイ | ★★★★★★★★★★ |
93 リトル・ブッダ | ★★★★★★★★★★ |
96 魅せられて | ★★★★★★★★★★ |
98 シャンドライの恋 | ★★★★★★★★★★ |
02 10ミニッツ・オールダー/ イデアの森(第1話) |
★★★★★★★★★★ |
03 ドリーマーズ | ★★★★★★★★★★ |